大きな北国での小さな日常。

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一生の覚書。

今日の内容は、読み手さん次第ではちょっぴりダークな内容かもしれない。
が、表題にもあるように、自分自身への覚書のつもりであえてここに。


先日、実験に使用する予定だったねずみちゃんのうち、1匹を完全なる私のミスで死なせてしまった。
ミスの原因は「麻酔薬(isoflurane)の誤投了」。要は手術の失敗。

手術を行う場合、最低2種類のグループを作る。
一つは、化学物質などを投入されたいわゆる、研究データを取る際にメインとなるグループ。
だから頭皮を開いた後、頭蓋骨をドリルで開けて薬剤を注入する作業を行う。
対して、もう一つのグループはシャム(sham)と呼ばれる比較対照グループ。
比較対照だから、メイングループのように頭蓋骨を開けて云々の作業はしないが、頭皮を開いて縫合という作業は必ず行う。
つまりは、整合性のあるデータを取るために、薬剤の投入をしたか・しなかったか。の違いだけで、一通りの手術の手順は踏むことになる。

院生の観察付きで何度も担当したことがあるシャム手術。
そこでそこそこ手つきも良かったから、という訳で、初めて一人で
任された。
で、私はその「シャム」の一匹をミスしてしまった。

先述したように、頭を開いて縫合するだけだから、当のねずみには何も負担は掛からない・・・・はずだった。
しかし、次のねずみへの手術を終えたあと、ふとケージを覗くと普段は桜色の足の裏が、真っ白に変わっていて静かに事切れていた。

別室で作業をしていた院生のフレイザーが様子を見てくれたが、麻酔量のメモリを見て一言

死因はこれじゃない?

実は手術中、ふと「麻酔のメモリを変えないといけなかったっけ?」と脳裏を過ぎっていた。
でも「シャムだし」と、また思いなおして麻酔量を変えなかった。

結果、これが命取りとなってしまった。

ミスは誰にでもある。
実際、今回の失敗について研究室のみんなは誰も責めず、むしろ

「誰でも最初は失敗するよ」
「ねずみの先天的な体質にも寄るし」

先のフレイザーも、普段はクールな人だけど
「死んじゃったのは1匹だけでしょ?(私が担当したのは計3匹)初めてなのによくやったよ」
なんて慰めてくれた。

が、しかし。

みんなが慰めてくれればくれるほど、さっさと麻酔量を変えなかったことが胸に過ぎる。
全然知らなかったわけではない。一瞬とはいえ脳裏に過ぎったのだ。
それを無視した自分というか、曖昧な知識の状態で事を進めてしまった自分の不甲斐なさに、かなり落ち込んでしまった。

私は、脳を採取するために行うパフュージョン(perfusion)には全く抵抗がない。
これこそ嫌いな人は大嫌いな作業で、仕事を開始した頃の日記にも書いたが、研究所仕事の中でもトップクラスの残酷な代物だ。

だけど私達は肉を食べる。魚も食べる。
これははっきり言って、食べるために牛や豚を殺している。
「私達の栄養素」という立派な大義名分がある。
私の中では、パフュージョンは全くこれと同じカテゴリー内で
「未来の科学のために」脳を採取していると信じている。

が、手術後のミスで死んでしまう。
私はこれが大嫌いだ。
麻酔が切れるに従って、呼吸がどんどん弱くなっていく。
そして呼吸が止まってしまう。
もちろん、本来のねずみ自身の体質や体力にも寄るところが大きいので
一概に、全てが全て手術のせいだとは言えないけど、はっきり言って
気分は良くない。

おまけに、今回の私のミスで死んだねずみは完璧に「ムダ死」である。
死ぬ理由がまるでない。
医療事故のニュースを見る度に「何やってんだ?」と憤っていたが、何のことはない。
自分もまるっきり一緒のことをやってしまった。

研究所にいる限り、いや、この業界で生きていくためには、これからもねずみの生死に関わることになるだろう。
同じ三途の川を渡らせることになるのなら、胸を張って渡ってもらえるような立派な理由をつけてあげたい。
「キミのおかげで、脳の神秘がまた一つ見つかったよ」というような。

メルヘンな希望だろうか。
だけど、それが動物を実験対象として扱う職に携わる人間の、出来る限りの誠意だと思う。

もう二度と、こういう失敗はしない。
しちゃいけない。

だから私への覚書。
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